台湾新政権誕生とその課題


 成熟的な民主国家にとって、政権交替は極めて日常のことである。だが、台湾では、51年間執政を取り続けてきた政権が降りるということは、民衆の心理及び政権担当の役人の業務や生計への衝撃の大きさを無視することはできない。

 商工企業が懸念しているのは、(1)過去、民主進歩党の環境保全及び社会福利をもとにした商工企業への反感情、(2)民主進歩党の財政経済政策を執行する経験の欠如、(3)民主進歩党による台湾独立傾向が中台間の緊迫関係をもたらし、投資自信に影響を及ぼすこと、などである。

 幸いに、台湾は50年の経済発展を経て、現在はすでに成熟的且つ自由的な経済体制になっている。過去、国民党の台湾に対する最も顕著的な貢献は、即ち経済発展である。早期に正確な工業発展政策及び奨励投資措置がとられたからである。最近は、民間企業の自発的な競争力の向上に越したことはない。民間企業はすでに経営管理経験、資金及び技術を着実に積み重ねている。台湾の企業は産業レベルアップ及び企業のシフト転換において、すべて十分に自主的に行っており、さらに大きな実績を擧げた。今日、台湾の石油化学、鉄鋼、半導体、情報、光学電子工業は国際上では、すべてトップの地位を占めている。台湾政府の機能はすでに早期の指導者役割から協力者に転換し、現在は効率且つ秩序のある投資環境を構築することに機能している。さらに、台湾当局財政経済部門の行政役人の素質は昔とは比べものにならず、ほとんど国家公務員資格或いは博士修士などの高学歴を擁しており、専門知識が極めて優れている。多くの優秀な青壮年代の専業人材に民主進歩党の財政経済ブレーンとしての学者が加わわり、台湾経済の発展は政権交替のために頓挫することにはならないだろう。 逆に、近年、財団出身の立法委員は立法院の財政委員会、交通部委員会などを占拠し、自己利益を図るために、立法及び行政に干渉することは、今日台湾経済の発展に最も大きな障害になっている。暴力団との癒着の排除を訴えた新政府は人情葛藤及び利益連結に関わっていないため、法規による事務処理、障害排除、財政経済法規の再建など、秩序のある財政経済体制を構築する事が可能になるだろう。新政府が直ちに直面している重大な財政経済問題について、以下のような問題点が挙げられている。

一、財政赤字

 台湾政府の本会計年度(99年7月から2000年12月まで)の財政赤字は5000億台湾ドルに上り、累積債務は2兆4000億台湾ドルに達して、すでにGDPの24.5%を占めているとともに、更に台湾政府の負債の上限に達している。近年、与野党ともに選挙を行う際、競って福利支出及び減税方案を打ち出している。財政が政治サービスの工具として利用されている結果、債務が嵩む一方になることをもたらした。新政府が以下の課題を慎重に検討することが期待されている。

(1)両税合一が実施された後、奨励投資による継続的な減税の必要性。
(2)土地及び株は台湾民衆が富裕を手にする主なルーツであるが、完全に免税されていることが合理なのか。
(3)職業身分別による減税の所得税制が合理的なのか。
(4)921台湾大地震のための復興費用が十分に賄われない場合、事業税の増税か建設税徴収の必要性。
(5)中央及び地方政府の税収の振り分け制度についての検討及び修正。

二、金融秩序

 1998年第4四半期に台湾本土性の金融危機が爆発した。20余りの財務苦境に陥った財団による銀行への返済不能高が2500億台湾ドルに達した。東港信用合作社、台中商業銀行、汎亞、東企など中央民意代表主導の金融機関による不正融資及び預金着用などの不祥事事件が相次いだ。更に、30社の小規模金融機構、農漁組合融資部が破産に瀕しており、金融秩序の整理が急務となっている。

(1)小規模金融機構及び農漁組合融資部の存廃及び位置づけの問題。
(2)公民営銀行の不正融資の検査。
(3)不告訴延滞の銀行の不正債権に対する検査。
(4)体質の悪い銀行の合併。

三、中台関係

 台湾対中国の年間出超額は150億米ドル、投資額は30億米ドルに達している。中台間の経済貿易関係が日増しに密接になっており、これは相互補完とともに、利益しあう関係でもある。双方はもし、良好的な連動関係を持てば、経済発展に寄与するばかりでなく、政治的安定の促進にも有利になる。中台間の三通(空海郵)の談合及び「急がず忍耐強く」政策の再検討の時機が迫っている。但し、双方は相互理解及び信頼の不十分な状況の中で、談合を行うことは不可能なことになる。それに、汪道涵氏の総統就任式の参加の要請、或いは中国資金の台湾への投資の開放といった考えも実情と相違しているという。中台関係は民進党政府にとって、最も大きな短所である。台湾の尊厳及び尊重されることをもとにして、いかに中台双方の隔たりを乗り切るかが課題になっている。

 経済事務において、民進党及陳水扁総統はともに実務経験に欠けているが、陳総統及びその運営グループは以下のような特徴を持っている。

(1)若年化、比較的弾力性を備え、硬直化しないこと。
(2)台湾本土化で、中台問題の突破について、歴史的な重荷を抱えていないこと。
(3)執政機会の到来は突然のようなため、より慎重、謙虚、比較的自己中心主義を持たないこと。

 台湾の選民は、今回は本当に「台湾人」出世の日が来たと言っている。民進党は今日、野党から与党に変身した後、多くの意見及び考え方について、より慎重且つ考慮を重ねた上、台湾の安定及び繁栄のために、最も適切な意思決定をしなければならないことになっている。


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